TOPページ › 甲状腺の病気と治療方法 › 『甲状腺の腫瘍(こぶ)』
甲状腺の中に腫瘍ができる病気です。腫瘍は、良性の場合と、転移や浸潤がみられる悪性の場合があります。
腫瘍が小さいうちは、症状は全くなく、自分で触ってもわかりません。かなり大きくなってきて初めて周囲の人から指摘されることがあるかどうかという程度で、検診などで見つかることが多い病気です。かなり大きくなっても、自覚症状に乏しく、呼吸や嚥下(食べ物などの飲み込み)に違和感を覚える人はごく少数です。
●血液検査
- 甲状腺ホルモン fT3
---活性型の甲状腺ホルモンで、強い甲状腺ホルモン作用があります。 - 甲状腺ホルモン fT4
---fT3の原料で、弱い甲状腺ホルモン作用があります。 - 甲状腺刺激ホルモン TSH
---甲状腺にホルモン分泌を促すために、脳から出されるホルモンです。 - 甲状腺腫瘍マーカ サイログロブリン
---正常の人も持つ「甲状腺ホルモンの直前物質」ですが、炎症疾患(慢性甲状腺炎、良性腫瘍、悪性の一部の腫瘍)で特異的に高値になるので腫瘍マーカとして利用されます。
●超音波検査
---超音波によって甲状腺の中にできた腫瘍の部位、大きさ、形状、硬さを、また付近にあるリンパ節腫大の有無と部位、について調べます。
腫瘍の大きさが他の臓器に影響をおよぼす程度か、悪性の可能性があるか、などが判断できます。
●CT(断層撮影)
---悪性が疑われた場合は、エコー所見との照合と肺転移の有無を確認するために頚部と胸部のCT撮影をします。良性でも巨大な腫瘍の場合は、他の器官への圧迫所見がないか(気管の狭窄など)をCTで確認することもあります。
CTの所見をもとに術式が最終決定されます。
●細胞診
---腫瘍の細胞を採取して、顕微鏡で観察します。良性、悪性の判断、または悪性の種類の判定を行います。
●201タリウムシンチグラム
---腫瘍の良・悪性を調べる検査です。
悪性腫瘍の場合は腫瘍が映りますが、良性腫瘍の場合はほとんどの場合映りません。
1)経過観察
2)甲状腺ホルモン剤服用によるTSH抑制療法
3)手術による甲状腺摘出
4)手術後の放射線治療
良性の腫瘍の場合、多くは、触診や超音波検査で大きくなりすぎないことを確認しながら経過観察となります。また、TSHが腫瘍増大に関係するといわれているので、ホルモン剤を服用し潤沢なホルモン状態を促すことでTSH(脳からの指令)を押さえる治療を併用することもあります。
悪性の腫瘍の場合の多くは、原則的に手術で甲状腺を一部、または全部摘出します。進行度によって付近にあるリンパ節も取り除きます。甲状腺摘出後は、薬による甲状腺ホルモンの補充が欠かせませんが、甲状腺ホルモン剤はほとんど副作用がみられないので長期服用も心配ありません。
悪性腫瘍と一言でいっても、乳頭癌の場合は一般的な癌より悪性度は低く、進行癌でなければ手術で完治する場合がほとんどです。
甲状腺良性腫瘍
多発結節性甲状腺腫
プランマー病 など
甲状腺悪性腫瘍
悪性リンパ腫
fT3, fT4, TSHは正常値を示します。サイログロブリンは、良性腫瘍と、悪性腫瘍のほとんどを占める乳頭癌・濾胞(ろほう)癌で高値を示します。悪性腫瘍の場合は、急激に増加します。