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橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺ホルモンが低くなる病気の中で、代表的な疾患です。ごく軽症の人も含めれば、女性の40-50人に一人がかかる病気といわれています。

[症状]

症状は下記表1の中の「機能低下症」の部分をご覧下さい。全体的に代謝が鈍くなり活動性が低くなる状態です。のどぼとけの下あたりにある甲状腺自体がわずかに腫れることが多いです。

甲状腺機能亢進・低下の症状の比較[表1]

※自覚症状には個人差がございます。まずは、検診、医師の診断をお受けいただくことが肝心です。

[診断、経過観察に必要な検査]

●血液検査

  • 甲状腺ホルモン fT3
    ---活性型の甲状腺ホルモンで、強い甲状腺ホルモン作用があります。
  • 甲状腺ホルモン fT4
    ---fT3の原料で、弱い甲状腺ホルモン作用があります。
  • 甲状腺刺激ホルモン TSH
    ---甲状腺にホルモン分泌を促すために、脳から出されるホルモンです。
  • 橋本病抗体 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体
    ---甲状腺組織内にあるペルオキシダーゼや甲状腺瀘胞細胞内に貯蔵されている糖蛋白(サイログロブリン)に対する自己抗体です。これらの抗体は甲状腺の細胞に作用して、結果としてホルモン生成機能を低下させます。

fT3, fT4のホルモン値は低値を、TSHは高値を示します。抗体はどちらか一方、もしくは両方が陽性を示します。

●超音波検査

---超音波によって甲状腺の大きさや形状を確認します。

大きさは、全体的にやや大きめになることもありますが、様々です。また甲状腺の血流量が減少し、硬さを示す数値もやや固めの計測値になります。また腫瘤(こぶ)を合併していることが多いので、その確認もします。

●甲状腺シンチグラム

---放射性ヨードを利用して、ホルモンの産生状態を画像的に確認します。
ホルモン生成にはヨード物質が必要なので、それをどれほど大量に甲状腺がとりこもうとしているかを、時間別にヨード物質の摂取率を測定することで確認します。

ホルモン値や経過時期によって結果はさまざまです。重症化して未治療が長く継続すると、ヨード摂取率は非常に低値になります。

[治療]

甲状腺ホルモン剤(チラージン、レボチロキシン 他)による服薬治療

甲状腺ホルモン剤で体内のホルモン量を正常に保てるように、不足分を補充します。直接fT3の補充をするよりもfT4の補充をすることで、作用時間を長く、また体内の恒常機能を利用して安定した状態を導く作用を期待します。橋本病は自己免疫疾患で、完治する病気というより体質ととらえた方がよい病気で、ホルモン補充は長期にわたるのが一般的です。甲状腺ホルモン剤は副作用が殆どなく、長期服用も心配のない薬です。

[橋本病に症状は似ているけれども原因が異なる疾患]

バセドウ病の術後や放射線治療後の低下症
甲状腺腫瘍(良性・悪性)術後の低下症
加齢に伴う低下
妊娠に伴う低下
ヨード過剰摂取(昆布のだし汁を大量に毎日飲む・昆布茶を毎日飲む・イソジンのうがいを毎日するなど)による低下
先天性甲状腺機能低下症